三月のお手紙   2006



      そっと襖を開けると、桃と菜の花が

      緋色の毛氈に映えて部屋を明るくしています。


      かしこまって雛壇の下に坐ると、

      さっきは目の高さに見えた内裏様が、

      高く遠くに感じられます。



      美しい小さな人形たちに比べて、

      なんとも自分が不必要に大きくて、

      むくつけき存在に思えて、私は肩をすぼめます。

      小さく…小さく…小さくなぁれ……



      お雛様は端然と正面を向いて、

      微かに笑みを浮かべておられます。


      “ハハァー”と、私は平伏してみます。


      じっとこうして頭を下げていれば、

      お雛様は、何か言って下さるのではないかしら?

      次の瞬間に何をすれば良いのか、私は考えるのでなく、

      ただ「お言葉」を待てば良いのではないかしら? 


       “………………?”



      お雛様が、もしほんとに、

      何か言って下さるのだったら、

      私は平伏して、それを待つのが、

      ほんとに一番良いのだったら、

      どんなに人生は楽でしょう!



      幼い私の中にあった平伏願望は、

      いつ、消えたのでしょうか。 



                      堀江はるよ

                         

                             
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                  2006年3月 更新履歴


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